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「年賀状」千年歴史物語

こんにちは、東京紙器です。

師走に入り、寒さが一段と厳しくなる中、そろそろ年賀状の準備に頭を悩ませる時期ですね。

実は、日本の年賀状文化は、平安時代から続く長い歴史を持っています。時代の変化とともに形を変えながら、人々の想いを伝える大切な架け橋として今日まで受け継がれてきました。

雅な文化からの始まり 平安時代の年始の挨拶


年賀状の起源は、平安時代の貴族社会に遡ります。

『枕草子』には、清少納言が「正月一日の文は、前年のうちに書きまうけて、硯の引き出しなどに入れおきて……」と記しており、新年の挨拶が洗練された文化として定着していたことがわかります。歌人として名高い藤原定家の『明月記』にも、和歌を添えた優美な言葉で新春を寿ぐ様子が記されています。

「枕草子を読む若い女性(葛飾北斎)」シカゴ美術館所蔵
CC0 Public Domain Designation
出典:「枕草子を読む若い女性(葛飾北斎)」シカゴ美術館所蔵
CC0 Public Domain Designation

武家社会における変容 鎌倉・室町時代の年始の儀


鎌倉・室町期になると、年始の挨拶は政治的な意味合いを帯びていきます。『吾妻鏡』に記された源実朝から後鳥羽上皇への年賀の挨拶は、その好例といえるでしょう。

「年の始めに際し、謹んで御機嫌を伺い奉り候……」という言葉には、主従関係の確認という政治的な意味合いが色濃く反映されています。

庶民文化への広がり 江戸時代の年賀状


江戸時代には、飛脚制度の整備によって年賀状が武士や商人たちの間に広く普及しました。江戸東京博物館に所蔵されている当時の年賀状からは、商人たちが取引先との関係維持に年賀状を活用していた様子がうかがえます。

また、この時期には歌川広重による「松竹梅図」や、葛飾北斎の「富嶽三十六景」をモチーフにした芸術性の高い年賀状も登場。年賀状が実用的な挨拶状としての機能に加え、芸術的な表現媒体として、主に文化人の間で発展していったことがわかります。

江戸後期になると、配りものとして、新春を寿ぐ絵と狂歌を合わせた春興摺物(しゅんきょうすりもの)という版画を交換する文化が発展しました。

名称:胆松に白蛇
作者:渓斎英泉筆
時代世紀:江戸時代・19世紀
出典:国立博物館所蔵品統合検索システム(https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10569-6310)

近代化がもたらした革新 明治時代の郵便制度


1871年の郵便制度開始は、年賀状文化に大きな転換をもたらしました。特に1873年に発行された日本初の郵便はがきにより、それまで一部の層に限られていた年賀状のやり取りが庶民にも広がりました。

半銭(金の価値に基づくと約65円)という手頃な料金設定と、縦7.9cm×横5.7cmという規格化された形状は、効率的な配達を可能にし、年賀状文化の大衆化を促進しました。

1899年に始まった「年賀郵便特別取扱」は、現代まで続く年賀状の大量一斉配達という仕組みの始まりでした。この制度の確立により、年賀状は日本の新年文化になくてはならない存在として定着していったのです。

戦後の新たな展開 お年玉付き年賀はがきの誕生


戦後復興期の1949年に登場した「お年玉付き年賀はがき」は、年賀状文化に新たな魅力を付け加えました。初回の特賞だったオートバイをはじめ、ミシンや腕時計といった豪華な賞品は、当時の人々の暮らしや憧れを映し出す鏡となっています。

その後、電気洗濯機やカメラ、テープレコーダー、カラーテレビなど、時代を反映した賞品が採用され、年がはがきは時代の象徴とも言える存在に。現在では、現金やカタログギフトなど、形を変えながらもその魅力を保ち続けています。

デジタル時代における進化 平成から令和へ


現代の年賀状は、伝統的な要素を守りながら新しい価値観を取り入れています。2022年からのFSC認証紙の使用や、WWFジャパンとのパートナーシップは、環境保護への意識の高まりを反映したものといえるでしょう。

2025年用の年賀はがきに採用されたディズニーキャラクターのデザインでは、ミッキーとミニーがお餅をつく姿が描かれ、その中に7つの隠れミッキーが配置されています。

受け継がれる想い


千年以上の歴史を持つ年賀状文化は、現代においても私たちの大切なコミュニケーション手段として生き続けています。形は変われど、新年の始まりに大切な人へ想いを伝えたいという気持ちは、平安時代から現代まで脈々と受け継がれています。

郵政博物館や国立国会図書館のデジタルアーカイブに残された数々の年賀状からは、それぞれの時代を生きた人々の想いや願い、そして日本文化の重層的な深みを伝える貴重な文化遺産となっています。

東京紙器の年賀状


東京紙器では、毎年お世話になったお客様や協力会社様へ、感謝の気持ちを込めた年賀状をお送りしています。弊社のモノづくりの面白さを少しでも多くの方にお伝えできばと、毎年さまざまな工夫を凝らしていて、今年は「浮世絵」風の年賀状を製作する予定です。

まだラフ画の段階ですが、少しだけお見せします。

東京紙器 2025年 年賀状 ラフ画

完成品はしっかりと色彩が加わり、さらに洗練された仕上りになる予定です。来年には、実際に皆様へお届けした完成品をご紹介する予定です。

新サービスのご紹介


東京紙器では、お客様からいただいた題材をもとに浮世絵タッチの絵画をデザインし、それを紙製品に仕上げるサービスを展開しています。

地元の風景や観光地の様子、プロマイド、御城印や神社仏閣などの御朱印向けの絵柄など、現代の日本の姿を浮世絵風に再現します。サービスに関する詳しい情報につきましては、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください!

“ideaを形に。”

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参考サイト


郵政にまつわるエトセトラ Vol.1 年賀状の歴史

https://www.jpcast.japanpost.jp/2022/01/135.html

郵政博物館 日本最初の郵便はがき

https://www.postalmuseum.jp/column/collection/post_8.html

えひめの歴史文化モノ語り 景品にも世相 興味深く

https://www.i-rekihaku.jp/research/monogatari/article/130.html

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