こんにちは、東京紙器です!
黒い紙、とても格好良いですよね。高級感があり、白インキでの印刷や金銀の箔押しが特に映えるものです。さらにレーザーカットを施せば、最高の紙製品が出来上がること間違いなし、と思いますよね。
世の中には様々な種類の黒い紙がありますが、どれも通常の印刷や打抜き加工を行う分には特に問題はありません。しかし、これをレーザーで加工すると、大量の「煤」が発生し、思った以上に大変なことになるんです。
今回の記事では、弊社でよく使う黒い紙がレーザー加工でどうなるのか、そして弊社で発見した「煤の出ない」黒い紙についてご紹介します。
目次
黒い紙ができるまで
紙の原料は木です。通常紙は木材の色をしており、そのままでは多くの用途に適さないため、漂白して白くしたり、着色をしたりします。黒い紙も同様で、抄紙の過程で着色されています。その際、主に使われるのが「カーボンブラック」などの「顔料」です。
カーボンブラックは、非常に細かい炭素の粒子で、深い黒色を生み出すために用いられます。この顔料が紙に均一に混ぜ込まれることで、紙全体がしっかりとした黒色を帯びます。さらに、黒色をより鮮やかに際立たせたり、色を紙全体に浸透させたりするために、さまざまな薬剤が使用されることもあります。
カーボンと馬が合わない加工
箔押し
深く上品な黒色を生み出すカーボンブラックですが、箔押しやレーザー加工とは相性が悪いと言われています。箔押しに使われる箔は、ベースフィルム、剥離層、着色層、蒸着層、接着層の5つの層で構成されています。この中で色を表現しているのが、着色層と蒸着層であり、特に蒸着層にはアルミニウムが使われています。
しかし、このアルミニウムがカーボンブラック(または薬剤)と化学反応を起こし、時間の経過と共に腐食が進行して箔が劣化してしまうことがあります。これが、黒い紙と箔押しの相性が悪いと言われる理由です。
レーザー加工
紙にレーザーを照射すると、紙はそのレーザーのエネルギーを吸収して急速に発熱し、蒸散して切断されます。カーボンブラックを構成する炭素は、非常に熱に強い元素です。このため、レーザーで黒い紙に加工を施すと、紙の部分は容易に焼き切れますが、カーボンの素材が残渣として残り、煤のような状態になります。この煤が中々取れず、非常に厄介な存在となります。
どの紙に何を使っているかはわからない
製紙メーカーは紙のレシピを公表していないため、実際にどの紙にどんな原料が使用されているかは分かりません。そのため、黒い紙が一概に悪いと言えるわけではなく、実績のない紙はテストを行い、その適正を見極める必要があります。
ただし、箔押しに関しては、業者が様々なテストを行い、その結果を公表していることが多いので、それを参考にすることができます。また、竹尾から販売されている「箔守-FS」という、箔の腐食を抑制する機能を備えた紙を使用するのも一つの方法です。
一方、レーザー加工に関しては、扱う業者が比較的少なく、情報があまり多くないのが現状です。
「NTラシャ 漆黒」を使ったテスト
そこで今回はレーザー加工適正のある黒紙を調査すべく2種類の紙をレーザー加工してみました。1つ目は「NTラシャ 漆黒」です。黒い紙に限らず、一般的にレーザー加工は厚い紙の加工には向いていません。そこで、切り絵御朱印にもよく使われる四六判130kg(約0.21mm厚)の紙をテストに使用しました。
「漆黒」という名前の通り、とても深い黒色になっている紙です。加工自体には問題がなく、一見すると仕上りは非常に美しいものになっています。
それでは、少し紙を擦ってみましょう。
すると、下の紙が真っ黒になってしまいました。
さらに、私の指も真っ黒です。
加工後の見た目は美しいものの、実際には大量の煤が発生しており、触るだけで指が黒くなります。また、周囲の紙や服にも黒い煤が付着してしまいます。写真はありませんが、加工機の周りも黒く汚れてしまい、オペレーター泣かせの結果となりました。
「内緒の紙」を使ったテスト
続いて、2つ目の紙をテストします。企業秘密(!)で紙の詳細は明かせませんが、厚みは約0.15mm程度と「NTラシャ」よりやや薄く、色も漆黒と比べると墨の色に近い感じです。レーザー加工の適正は良く、切れの悪い部分もなく、煙や汚れの付着もほとんど見られません。
それでは、「NTラシャ」と同じように少し擦ってみましょう。
先ほどと違い、全然汚れが付きません。
結果はNTラシャと真逆で、煤は発生しませんでした。オペレーターからも、作業中にそこまで汚れを気にする必要がないので、非常に作業しやすいと評価を受けました。
まとめ
今回の記事を通して、黒い紙の加工は意外と難しいということが伝わったかと思います。実際、黒い紙に限らず、レーザー加工と相性が悪い紙は他にもあります。例えば、ヴァンヌーボはその美しい紙質と印刷適性の良さから、パッケージやパンフレット、ノベルティなど幅広い分野で使用されていますが、レーザー加工を施すと、塗工されている薬剤の影響か煤が発生し、せっかくの美しい白紙が黒く汚れてしまうことがあります。
このように、紙の種類によって加工適正は異なり、どの紙がレーザー加工に適しているかは、実際にテストしてみるまでわからないことが多いです。
弊社は長年にわたり、さまざまな紙のレーザー加工に携わってきました。そのため、今回ご紹介した黒い紙の加工のように、一般的には「NG」とされるような紙でも、代替紙や他の加工方法をご提案することが可能です。
黒い紙にレーザー加工をしたい方、紙の加工でお困りの方は、ぜひお問い合わせフォームからご相談ください!