和多都美神社 幻想的な海中鳥居と龍宮伝説を持つ対馬の神秘的な神社
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最近、長崎県の対馬が注目を集めています。その背景には、世界的に大ヒットしたゲーム「ゴースト・オブ・ツシマ」や、アニメ化もされた大人気漫画「アンゴルモア~元寇合戦記~」の影響があります。いずれも元寇をテーマにした作品で、対馬を舞台にしています。
今回は、そんな話題の対馬にある歴史深い神社「和多都美(わたづみ)神社」、そして弊社で製作させていただいた御朱印をご紹介します。また、歴史と自然が豊かな対馬の魅力についても触れていきます。
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魅力的な離島「対馬」
アクセス
対馬は九州と朝鮮半島の間にある、佐渡や奄美大島に次ぐ全長およそ82kmの大きな島です。福岡の博多港からフェリーで4時間半~5時間半、高速船(ジェットフォイル)を使えば2時間15分ほどで到着します。飛行機なら、福岡空港や長崎空港から30分ほどで「対馬やまねこ空港」に到着します。日本の本土より韓国から近いこともあり、韓国観光の後、釜山経由で対馬に入る方もいるそうです。
人と共に紡がれてきた独特で魅力的な自然
対馬が島として形成されたのはおよそ1万年前のことです。陸続きだった大陸と日本列島の間にあった対馬には、島となる過程で大陸系と日本系、そして対馬固有の生き物それぞれが残りました。また、渡り鳥の中継地としても有名で、日本にいる鳥類の半数以上が対馬を経由して飛来していると言われています。
対馬は、島内の約9割が山地であり森林に覆われています。そのため、古代から人々は焼畑農業などを行いながら巧みに山林を活用する生活を営んできました。現在でも、対馬には、そうして形成された里山環境を基盤とした生態系が維持されています。その中でも代表的な生き物は「ツシマヤマネコ」で、農業活動によって育まれた雑木林や水田に生息するアカネズミやカエルなどを餌としています。人々の生活と自然が一体となっているのが、対馬の自然の特徴であり魅力です。
貴重な原生林とリアス式海岸
対馬には貴重な原生林も残っています。「龍良山」「白嶽」「御岳」の三箇所が有名で、それぞれ国の天然記念物に指定されています。中でも龍良山は、東アジアでも希少な照葉樹林の原生林が麓から山頂までの広い範囲で残されている、とても貴重な場所です。四季折々の変化が楽しめるのも魅力的です。
島の中央部に位置するのが浅茅湾というリアス式海岸です。国定公園に指定された景勝地で、大小様々な島が織りなす複雑な入り江は、他ではなかなか見ることのできない絶景です。遊覧船やシーカヤックといったアクティビティも楽しめるそうです。
和多都美神社について
そんな浅茅湾の岸辺に凛と佇むのが、今回ご紹介する和多都美神社です。彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)と豊玉姫命(トヨタマヒメノミコト)を御祭神とする和多都美神社は、満潮になると、5本の鳥居のうち1番目と2番目の鳥居の土台部分まで海に沈み、社殿がまるで海に建つかのように見える幻想的な姿が特徴です。その光景から、龍宮伝説が残るこの神社は、かつて海が参道となり、船で参拝されていたと言われています。
平安時代に編纂された「延喜式神名帳」にその名が見られることから、非常に歴史があり、格式の高い神社です。豊玉姫命をお祀りしていることから、縁結びや子宝のご利益があるとされています。また、海上安全にもご利益があります。
台風で鳥居が倒壊
令和2年の台風10号では、海に建てられた第一の鳥居、「平成の大鳥居」が倒壊しました。同年の末から、その再建を目的としたクラウドファンディングが実施され、見事、目標額の542%にあたる2,710万円を集めました。支援者の中には「ゴースト・オブ・ツシマ」のファンも多くいらっしゃったということで、ゲームの影響の大きさを伺えます。
リアルでかわいい御朱印
今回弊社が製作をお手伝いさせていただいたのは、「ツシマヤマネコ」をモチーフにした御朱印です。様々な資料をご提供いただき、何度も打ち合わせを重ねた結果、とてもかわいらしいツシマヤマネコのイラストを冠した御朱印が完成しました。 この御朱印の用紙には、繊細で優しい風合いの紙「アラベール」を使用しています。この紙は、きちんと管理された森林から生産されたFSC®森林認証紙です。印刷適性が良く、今回はイラストの発色がよりきれいにみえるように「スノーホワイト」という白い色を選びました。レーザーカット加工との適性も非常に良好で、レーザーカットされた外周ふくめ、とても美しい仕上がりとなりました
その他の切り絵の製作事例
竜宮伝説の御朱印
今回の「ツシマヤマネコ」の御朱印以外にも、これまでに数種類の御朱印製作を弊社で承りました。最初にご依頼いただいた御朱印は、御祭神である彦火火出見尊と豊玉姫命が登場する「竜宮伝説」や「山幸彦海幸彦」伝説をモチーフにした2枚組のもので、2枚を並べると景色がつながり、物語が描かれています。
豊玉姫命は天女のように美しい神様ですが、本来の姿は白蛇であったと伝承されています。御朱印には、足元に本来の姿が垣間見え、波を操っている様子が描かれています。対となるもう1枚には、彦火火出見尊(山幸彦)が海神(わたつみ)からもらった鹽盈珠(しおみつたま)、鹽乾珠(しおふるたま)という玉を使って、海の潮汐を操る様子が描かれています。山幸彦を覆うように描かれた松の木は、神社にあるご神木である「龍松(たてまつ)」を表現しています。根が龍のように地上を這っており、海神の化身と言われています。
伝説では、海神の娘である豊玉姫命は、和多都美宮で彦火火出見尊と出会い結婚されたことから、縁結びの切り絵御朱印として、この夫婦神さまと海中鳥居がモチーフになりました。
龍神と海中鳥居
竜神と海中鳥居を題材にした御朱印も製作しました。豊玉姫命の父親である、豊玉彦命(大綿津見神、おおわたつみのかみ)は龍の姿をしていたと言われ、龍神をシンプルに白色で表現し、鳥居には豪華な金箔を施し、高級感のある仕上がりにしました。
海神神社の舞楽の切り絵御朱印
和多都美神社から北西に車で30分ほどのところにある海神神社。こちらで頒布される御朱印の製作もご依頼いただきました。デザインには、大きく海神神社の文字を右側に配し、左側には対馬舞楽で使われていた陵王の面と火王の面を切り絵にし、お面の間には対馬の全体図も切り絵で再現されています。海神神社の文字は、対馬府中藩の藩主宗義達の長男で、伯爵の宗重望が揮毫した書画をそのままデザインに取り入れました。よく見ると、島の切り絵部分に鳥居のマークがあり、神社の位置が分かるようになっています。
さいごに
対馬はその形成過程からなる独特な生態系と、国境離島という立場から複雑な歴史を持つ、非常にユニークな島です。豊かな自然と美味しい海の幸、そして独特で深い歴史を楽しめます。 素晴らしい時を過ごせる対馬観光の折には、ぜひ記念に和多都美神社を参拝してみてください。素敵な景色と空気できっと心が洗われるはずです。遠方で訪れるのが難しいという方でも、今年の4月に開所したオンライン授与所から御朱印を手に入れることができます。
参考サイト
和多都美神社公式サイト
和多都美神社 オンライン授与所
https://watadzumi.com/jyuyosho
インスタグラム
https://www.instagram.com/p/C78X1p_PTww
つしま旅
対馬ユネスコエコパークの誕生を目指して: 信仰と暮らしによって育まれた「里島」の保全と活用 川口幹子・荒木静也 一般社団法人MIT 対馬市
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seitai/66/1/66_147/_pdf