油山寺 自然と歴史が交差する静寂の聖地と風鈴まつり
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今回ご紹介するのは、古くは遠州や遠江国と呼ばれた地域、静岡県袋井市にある三古刹の一つである真言宗智山派のお寺「医王山 油山寺(ゆさんじ)」です。山全体が境内であり、広大で自然豊かなお寺です。また歴史深い建造物や文化財が残り、飛鳥時代から連々と続く歴史が感じられ、その時々の権力者から受けた厚い信仰を思わせます。
油山寺では今の時期「遠州三山 風鈴まつり」が開催され、その美しさと音色を求め、多くの参拝客で賑わいます。また、毎年風鈴まつりの期間中は限定の切り絵御朱印が頒布され、大変な人気を博しています。そんな大人気の切り絵御朱印の製作を弊社でお手伝いさせていただきました。
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油山寺の歴史
医王山薬王院油山寺は、飛鳥時代の701年に行基によって薬師如来を本尊として開山されました。749年には、女性天皇として有名な孝謙天皇が眼病平癒の祈願のため訪れ、境内を流れる「瑠璃の滝」の水に加持祈祷し眼を洗ったところ、その眼病が治ったと伝えられます。そのことから眼病平癒のお寺として、名だたる武将や天皇などから信仰を集めました。
油山寺の守護神は、軍善坊大権現という大天狗です。足腰の神様として、古くから東海道の旅人たちの信仰を集めてきました。以前は樹齢1100年といわれる巨大な天狗杉がありましたが、台風で倒木してしまい、現在は、巨大な根の部分が保存されています。
油山寺の見どころ
油山寺には歴史的価値の高い建造物や文化財が数多く存在し、そのどれもが見逃せないポイントですが、中でも代表的なものをいくつかご紹介します。
山門
油山寺を訪れるとまず見えてくる山門は、かつて掛川城の大手門だったものが、明治時代の廃城令の折に移築されたものです。江戸初期に建てられた門で、二層片潜付城門という作りになっています。これは門と櫓(やぐら)が一体となっていて、大きな門の他に潜門(くぐりもん)という小さな門が設けられた、防御と利便性を兼ね備えた江戸時代ならではの珍しい建築です。
方丈
境内のちょうど中腹あたりに位置する方丈(ほうじょう)も江戸時代に建てられたもので、大変貴重な寺宝が収められています。かつて山門に飾られていた鯱鉾も展示されていて、これは江戸時代初期の作品とされ、国の重要文化財に指定されています。
三重塔
さらに登ったところにある三重塔は、油山寺の象徴とも言える美しい建築です。この三重塔は源頼朝公から眼病平癒のお礼として寄進されたもので、国の指定重要文化財に登録されています。建築は、上層が禅宗様式と大仏様式、中下層は和様式が用いられた折衷様建築の非常に美しい塔です。屋根は銅板葺です。
薬師堂内薬師如来厨子
山頂にある薬師堂には、今川義元公より寄進された「薬師堂内薬師如来厨子(やくしどうないやくしにょらいずし」が鎮座しています。室町時代の建築と伝わる金色に輝く入母屋造の厨子で、屋根は本瓦板葺きと大変豪華な作りになっています。中には秘仏である薬師如来が安置されています。
遠州三山 風鈴まつり
5月25日(土)~9月1日(日)にかけて開催される「遠州三山 風鈴まつり」は、油山寺の夏の風物詩として多くの人々に親しまれています。静岡県袋井市に位置する油山寺に加え、同市内の「法多山 尊永寺」と「秋葉総本殿 可睡斎」の三寺が「遠州三山」として風鈴で彩られ、たくさんの参拝客で賑わいます。
風鈴まつりの由来
では、なぜお寺で風鈴まつりが開催されるのでしょうか?
現在見られるガラス製の美しい風鈴は、江戸時代から作られるようになりました。その風鈴の原型になったと言われているのが風鐸(ふうたく)です。風鐸はお寺の塔や堂の軒先に吊り下げられる青銅や鉄製の鈴で、風が吹くと、中の舌(ぜつ)が揺れて音を鳴らし邪気や悪霊を遠ざけるとされています。風鈴が暑気払いとして用いられるようになったのは、邪気払いから転じた、いわば江戸っ子の言葉遊びの一つだったのかもしれません。
風鈴の成り立ちを考えると、お寺と風鈴の関係は意外に深く、自然に納得できます。遠州三山では、風鈴の成り立ちに加えて、その丸みのある形状が仏教の考え方の一つである「円相」と縁があるとし「ご縁日風鈴」とも名付けています。円相は、特に禅仏教における観念の一つで様々な解釈がされますが、心と仏と全ての生物(衆生)に区別(三無差別)はないという「華厳経」の理念を表しているともされます。
参道を歩くと、あちこちに飾られた沢山の風鈴の音色が涼を感じさせ、時折聞こえる風鐸の音は邪気を払い、歴史の深みも感じられるはずです。そんなお寺独特の風鈴祭りを存分に味わえるのが「遠州三山 風鈴まつり」です。
風鈴まつり限定切り絵御朱印
この風鈴まつりの期間限定で頒布されている切り絵御朱印は、お祭りにちなんで風鈴をモチーフにし、夏らしさを感じさせる団扇とかわいい蛙が描かれています。風鈴の短冊には「ゆさんじ」「ふうりん」「まつり」と書かれ、風鈴まつりゆかりの御朱印だと分かります。団扇には日付などの判子を押していただけます。
御朱印は全て切り絵で表現されており、A6より小さい大きさなので、通常の御朱印帳にも難なく貼ることができます。用紙は仏教の七宝の一つでもある瑠璃をイメージした青い紙を使用しており、涼しさを感じられるだけでなく、油山寺の本尊である薬師如来の浄瑠璃浄土の世界観も感じられます。
おわりに
歴史と自然豊かな油山寺をじっくり見て回ると、それだけで半日以上かかってしまうかもしれませんが、お時間に余裕があれば、遠州三山の「尊永寺」と「可睡齋」も参拝されてみてはいかがでしょうか。どちらも歴史があり、江戸時代から人々に親しまれてきた素敵な寺院です。少し足を伸ばせば、掛川城へも行けます。平成初期に再建された木造の天守閣を有する立派なお城のようです。
あなたも油山寺の風鈴まつりで涼を感じてみませんか?
油山寺では、風鈴まつりの限定御朱印以外にも、季節ごとに異なる御朱印を頒布しています。そちらも是非お見逃しのないように、参拝の際は御朱印帳をお忘れなく!
これまでの御朱印
参考サイト
油山寺 公式サイト
いこーよとりっぷ 「風鈴の涼やかな音色で暑気払い 袋井市の「遠州三山風鈴まつり」
https://trip.iko-yo.net/articles/501
「円相の考察」 洪在成 著
※PDFがダウンロードされます
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ibk/56/2/56_KJ00005180810/_pdf