平安時代から現代までのペーパークラフトの進化
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東京紙器は60年以上にわたり打抜き加工業を営んでおり、創業当初から主に幼児雑誌や教育雑誌向けの付録の製作に携わってきました。昭和から平成の中頃までは雑誌全盛の時代で、付録も紙の工作物(「ペーパークラフト」)が主流でした。当時は、毎月何十万という付録を製作し、常に納期に追われる非常に忙しい日々でした。
しかし、2000年代に入ると少子高齢化やデジタル化の影響で紙の付録が激減し、長年の経験と知識が必要なペーパークラフトの加工ができる会社も減ってしまいました。複雑な形状のペーパークラフトは型が高価で、打抜き加工代も準備に時間を要するため、少量の製作ではコストが合わず企画が頓挫することも多いです。
今回は、そんな苦境にさらされるペーパクラフトの歴史やローコストな製造方法、そしてこれからについてご紹介させていただきます。
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ペーパークラフトの歴史
ペーパークラフトの歴史は古く、日本では平安時代の「ひいなあそび」が最古の例とされています。これは木でできた人形に紙で作った着物を着せる貴族文化の遊びでした。今で言う「着せ替え人形」のようなもので、当時の貴族の子供たちの遊びの1つでした。
江戸時代になると、立版古(たてばんこ)と呼ばれる現代風のペーパークラフトが生まれました。これは、浮世絵(錦絵)のように多色刷りされた紙を切って折りたたんで形を作り、糊で固定して組立てます。今日のペーパークラフトやペーパーモデルの先駆けとされており、非常に繊細で精巧な作品が多いことで知られています。地域で異なるスタイルや技法が生まれ、特に祭りや行事の際に子供たちに配られるおもちゃとして、また家庭内での娯楽として、江戸から明治にかけて庶民の間で親しまれました。
昭和のペーパークラフト
昭和になると機械化と型抜き技術が導入されたことにより、あらかじめ切り抜きが入ったペーパークラフトの大量生産が可能になりました。当時勃興期であった幼児・少年雑誌が全国規模で販売されるようになるのに従って、ペーパークラフトも一気に広まりました。複雑で大掛かりなペーパークラフトが作られるようになったのもこの時期からです。
ペーパークラフトの特徴
ペーパークラフトは、紙を主材料として使用し、切る、折る、巻く、貼り合わせるといった技法を駆使する手工芸です。和紙や折り紙、上質紙、コートボール、色紙を使うのが一般的で、紙の柔軟性と可塑性を活かし、簡単な形から複雑な立体構造まで、非常に幅広いデザインができます。
ペーパークラフトの種類
折り紙
紙を折ることで様々な形を作り出す日本の伝統的なペーパークラフト。
接着剤やはさみを使わずに作ることが一般的です。
立版古
主に日本で発展した、和紙などを用いて風景、建物、動物、人形などを立体的に組み立てるペーパークラフト。
切り絵
紙を切り抜いてアート作品を作る技術。
非常に繊細な作業が求められることが特徴です。
カードモデリング
建築物や車両などのミニチュアモデルを紙で作る技法。
精密なカットと組み立てが求められます。
パピエマシェ
紙を細かく破ったものを水と接着剤で練り、型に塗って固める方法です。
彫刻やマスク作りに用いられます。
レーザーカットでつくるペーパークラフト
最近では、レーザーカットを使用した、非常に繊細で精緻な切り絵が人気を博しています。レーザーカットの特徴は、抜型が不要なため型抜きに比べて初期費用が少なく、また、抜型で再現できないような複雑な形状のものを加工できるというメリットがあります。
デメリットとしては、抜型に比べて大ロットでの製造に時間がかかるという点と折筋加工ができない点です。弊社では、筋押しの代替え技術としてレーザーでマイクロミシンを入れています。細かい部分まで折り目を入れられるので、きれいに組み上げることができます。下の画像は、それぞれミシン加工の深さを変えて比較的マイクロミシンが目立つものとそうでない2体のペーパークラフトです。このような工夫で組立てやすさや見た目に変化を加えることができます。
小ロットで複雑なペーパークラフトに関してはレーザーカットを使用し、大ロットで単純なものは打ち抜きを使用するといった使い分けをするのがいいでしょう。
ペーパークラフトのこれから
近年では、ペーパークラフトが知育玩具として再評価されています。ペーパークラフトを作る過程には、考える、触る、折る、切る、貼るなどの様々な動作が含まれます。これが幼児期の思考力や巧緻性を養うのに非常に向いているのです。また、平面から立体を構成するので、情報を立体的に理解する空間認知能力を高めることにも繋がります。
ただし、多様な選択肢の中から知育玩具としてペーパークラフトが選ばれることは少なく、また少子化の影響もあるので、以前のような大ロットではなく、より小さなロットでの生産が求められています。
しかし、今ではオンデマンド印刷とレーザーカットを組み合わせることで、ロットが小さくても、少ないコストでオリジナルのペーパークラフトを作ることが可能になっています。これからは、よりニッチな分野にフォーカスし、多様なペーパークラフトを少量生産していく方向が求められており、弊社は引き続きその方向へ全力でコミットさせていただこうと考えています。
さいごに
東京紙器では、ペーパークラフトの設計から製作まで幅広いご相談に対応できます。ご希望の内容やロットにあわせて適切な製作方法をご提案させていただきますので、お気軽にご連絡ください。
また、レーザーカットを使用して製作したペーパークラフトのサンプルをご用意しています。
ご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
よろしければ、こちらの記事も合わせてご覧ください。
参考サイト
ひいなまつりの起源
http://hina-matsuri.jp/lern_kigenko02.html
立版古について
ペーパークラフトではじめる幼児期の「探究的なまなび」
https://benesse.jp/kosodate/202008/20200824-1.html
レーザーカットを使ったペーパークラフト事例
「ペパクラ」グッドデザイン賞2008を受賞
https://www.tokyo-shiki.co.jp/archives/213
1/20漕艇競技用ボートペーパーモデルキット
https://www.tokyo-shiki.co.jp/archives/209
G段ボールレーザーカット
https://www.tokyo-shiki.co.jp/archives/252