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江戸の紙はSDGsに沿っていた!環境に優しい「和紙」について

和紙は、日本に古くから伝わる伝統的な手法で楮、雁皮、三椏(みつまた)などを原料として作る紙のことです。江戸時代には、書物だけではなく傘や提灯、障子など多くの日用品にも使われるようになり、まさに人々の生活になくてはならないものでした。

私は製紙業の工業化以前に、これだけ紙が普及していた国を他に知りません。今回は、なんとなく知っているけどあまり手にしたことがない和紙のはなしです。

 

そもそも和紙とは

和紙は、楮や雁皮、三椏といった植物の繊維から作られます。これら植物の皮を煮出し、細かく砕き繊維状にして水とトロロアオイなどのノリと混ぜ合わせ、それを漉く(繊維が混ざった水を揺すり均一に伸ばしつつ繊維を絡ませながら水を捨てる)ことで作られます。

簡単に書いていますが、実際にはとても多くの工程があり、良い紙を作るには確かな技術と長い経験が不可欠です。

和紙の繊維は洋紙と比べると長くとても丈夫で優れた保存性があります。厚みの自由度もあり、裏が透けるほど薄いものから名刺用途にも使えるようなしっかりとした厚みのあるものまで作れます。

ちなみにヨーロッパでも紙は手漉きされていましたが、原料は主にボロ布などの繊維を使っていたそうです。
早くから工業化が進んだ影響なのか、今ではヨーロッパ古来の手法を使った紙職人はほとんどいないようです。

しかし、調べたところ、ドイツにヨーロッパと日本の製法をアレンジした独自の製法で手漉き紙を作っている方がいたので、リンクを貼らせてもらいます。

https://papiergangolfulbricht.com/en/philosophy/

注:英語です!

 

どんな印刷や加工ができるのか

和紙と一言で言っても様々な種類があり一概にはいえませんが、例えば印刷適正の良い機械漉きの和紙であればオフセット印刷ができますし、手漉きで厳密な寸法が出ていないものや表面の平滑性の低い和紙であれば凸版印刷やシルク印刷ができます。厚みのある和紙であれば、凸版印刷の他に箔押しとの相性が良いですね。

打抜き加工もできますが、紙の厚みによって抜き方が変わります。極薄和紙は自動機で流せないことがあるので、ビクや倒しでの加工が向いています。

レーザーで加工する場合、種類によって焦げが目立ったり、厚みのムラによってカスが残ったりすることがあります。はじめての紙は事前にテストが必要です。

なお注意点として、手漉き和紙の場合、どの印刷や加工を使うにしても見当(位置合わせ)は出ないと思ってください。ですから精度が必要な印刷や加工は向いていません。

 

日本各地の手漉き和紙

洋紙を含めた紙全体の生産量から見ると和紙は非常に少ない生産量ですが、それでも全国に様々な手漉き和紙が現在もあります。文化遺産に登録されているものをいくつかピックアップしてみました。(リンクは文化庁のホームページへ飛びます)

【越前鳥の子紙(福井県)】
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/303/00000332

 

【本美濃紙(岐阜県)】
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/303/122

 

【石州半紙(島根県)】
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/303/123

 

【小国紙(新潟県)】
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/313/242

 

小国和紙生産組合さまで紙ができるまでをわかりやすくご紹介してくれています。是非下記ウェブサイトもご覧ください!

https://www.oguniwashi.com/blank-8

 

【細川紙(埼玉県)】
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/303/121

なんと、弊社所在の埼玉県にも和紙の製造技術が残っています!

実は埼玉県(当時の武蔵国)では奈良時代から製紙が行われていた記録が残っており、上記細川紙の解説文記載の通り、埼玉県の小川町を中心に比企・秩父・男衾が江戸時代には和紙の一大産地として栄えました。今でも小川町では町の名前を取って小川和紙として、長い歴史を受け継いで現在も和紙製造が続けられています。

この他にも全国各地で様々な和紙が現在も製造されていて、伝統的な製造方法を守り続けているところがたくさんあります。

 

これからの和紙

和紙の原料になる楮や三椏は成長が早く収穫によって抜根することもありません。
紙を作るためには大量の木を伐採しなければいけないイメージがありますが、木を枯らさずに毎年収穫できるなんて、とてもSDGsな感じがしますよね。

そんな和紙ですが、やはり製造量の伸び悩みやつくり手の高齢化といった問題に直面しています。少しでも多くの人の手に渡ることが、和紙文化を守り続けていくために必要です。

今年度は切絵御朱印のお話をいただくことが増えましたが、それに伴って和紙や和紙風の洋紙を使いたいという要望も多くいただきます。
弊社では紙加工の専門業者として、和紙、和紙風の洋紙のご紹介や、それらの紙に適した様々な印刷や各種加工をご提案していければと思っております。

古いようで新しい和紙を使った紙加工品を作成してみませんか?紙加工のご相談はホームページ内お問合せフォームよりぜひお願いいたします!

 

「Ideaを形に。」
山田秀嗣
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