創業64年の紙加工屋が解説する紙の打抜き加工の全て【第3回 型編】
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前回記事から早2か月・・いやに寒くなったなぁと思っていたらいつの間にか冬がやってきておりました。大変長らくお待たせいたしました打抜き加工連載第3回です。お陰様で秋は忙しい時間が続き、なかなか筆を取ることがかないませんでした(言い訳)
先日、打抜き機械の製造現場を見学する機会などもあり、モチベーションが上がってきたところで、そういえばいい加減連載書かないとマズイんじゃねと思って重たすぎる腰を無理やり上げたというのが真相でございます。
本当は、連載を心待ちにしていた読者の方々を思って、これ以上待たせてはいかん!と義憤に駆られて急いで書きました!と言いたいところなのですが、普通に時間無かったんですよね。。これ書いてるのも夜中の12時に超集中BGM聞きながらという受験生みたいな感じなので、どうかご容赦を!
では、Time is Money。皆様の貴重な時間をどうでもいい弁明で無駄にするのはこれくらいにして、早速本題の型の話に参りましょう!
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型の種類
さて、弊社が営んでいる紙の打抜き加工には型が必須です。前回ご紹介した平版自動打抜き機には必ず必要となる型ですが、どのような物なのでしょうか。
型には木型、金型、腐食型、彫刻型といった種類があります。各種、加工物の素材や形状、加工方法などに応じて使い分けます。また、それぞれ製造方法が異なります。木型はベニヤ板にレーザーカットや糸鋸で切れ目を入れ、そこに筋刃、切刃、ミシン刃など様々な刃物をはめ込んで作ります。
金型は火造りが一般的で、鋼材を熱して変形させ、刃付けと研磨、最後に焼入れをして作ります。スウェーデン鋼という鋼材の場合は刃先の研ぎが不要です。
腐食型は、金属版の刃物になる部分を残して他を溶かし、残った凸部分の先を研磨して作ります。ピナクル型と言うことも多いですね。
最後に彫刻型ですが、これは機械を使って金属の塊から削り出して作る型です。
それぞれの型の説明は次項以降で。
型と言えばコレ。我こそ王道。の木型
この業界では木型のことを「トムソン型」や「ビク型」と呼んでいます。皆様もトムソン抜き、ビク抜きという言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、木型はこれらの抜きでよく使用するために名称も上記にならっているということです。
木型は形状の再現性に優れ、刃物の種類が豊富なことから、数ある型のなかでも最も汎用性に優れています。一方で、その性格上、刃物自体による制限があるため、高さ、複雑さ(形状の精細さ)、角度の限界があります。
木型は材料費やかかる工数が他の種類の型に比べて安価です。通常紙の打抜き加工で「型」と呼ぶのはこの木型のことと考えて間違いはありません。
打ち抜きで木型を使用する場合、そのままでは加工ができず、必ず跳ね出し用のゴム貼りが必要になります。跳ね出しとは、型に食い込んだ紙などの加工媒体を取り出すことです。跳ね出しができないと型の破損に繋がります。型の写真などを見ると、よく緑や青色の物がついていますが、それがこの跳ね出し用のゴムです。
ミクロの力学の話になりますが、これによって綺麗な打ち抜きができるようになるため、地味に重要なのがゴム貼り作業です。使用するゴムの種類や貼り方は各社の特徴が出たりします。
打抜きの型!といえばこの木型。これで出来ない物をその他の種類で補っていると捉えればいいと思います。
ポンスやブッシュで活躍!の金型
金型は金属の塊から作る型のことで、主にポンス抜きやブッシュ抜きで使います。ポンスやブッシュ抜きはよくカードなどの抜きで使われる抜き手法のことです。専用の機械が必要で、当社内にはこの設備はありません。
金型は一般的には火造り製法で作られます。金型は製作に時間がかかる、且つ鋼材が高価なので、木型などに比べて型代が高くなります。
特徴として他の型では作業できないような厚いものが加工できます。加工媒体や加工量に応じて種類を使い分けます。
細かい・薄い物は任せろ!厚いのは任せた!の腐食型
腐食型は、細かい形状の打ち抜き加工やシールの抜き加工に使われる型です。金属板を腐食後ドリルで刃先を作って作製します。フレキシブルピナクルダイ(通称ピナクル型)とも言います。※塚谷刃物製作所の商標
腐食の型は木型に比べて材料代、加工代共に高価ですが、木型と組合わせて使用することも可能。例えば、封筒に会社ロゴの細かい形状を加工したいといったときに、封筒部分は木型、ロゴ部分は腐食型で制作して加工することができます。
木型ではできない超薄物加工やシール輪転・シリンダーでの高速加工機(これも当社にはありません)に使えるなどの強みがありますが、逆に切れ味が悪く、厚い物には適しませんし、非常に高価です。また耐久性も低く、破損しやすい型とも言えます。
切れ味・耐久最強!攻守ともに隙が無い(けど価格も最高)な彫刻型
彫刻型は、ステンレス製などの金属の塊をNC加工(数値制御工作機械による加工)によって切削し、土台と刃物を作り出します。木型や腐食型と比べて、最も精度の高い型が製作できます。
硬度の高い素材を使うので、切れ味と耐久性に優れており、腐食型と同じように木型に組み込んで使用することができます。刃高10mmまで切削ができるので、厚いものの加工も可能です。更に彫刻型で特筆すべきは、再研磨ができることです。
このように切れ味・耐久性・精度共に優れた型ですが、製法で分かる通り非常に高価且つ納期が長いです。かなり特殊な用途でなければ使われない型だと思いますが、もう他の型ではどうにもならん!誰か助けて!という時に最終手段として思い出せると良いでしょう。
まとめ
- 木型
- 安価
- 納期短い
- 打ち抜き加工の定番
- 汎用性に優れている
- 金型
- 高価
- 納期長い
- 厚いものが抜ける
- 腐食型
- 高価
- 納期長い
- シール加工(ハーフカット)が得意
- 耐久性が低い
- 彫刻型
- 高価
- 納期長い
- 耐久性が高い
- 再研磨できる
いかがでしたでしょうか。
あまりお客様が型種類を指定することはありませんが、このような知識を持っておくと当社のような抜き屋と話すときに役立つと思います!
今回は型についてご紹介いたしました。
次回は型とも密接に関係している「刃」について。
お楽しみに!(次回は暖かくなってるかもですね)
「Ideaを形に。」東京紙器株式会社