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創業64年の加工屋が解説する紙の打抜き加工の全て【第1回 基本編】

東京紙器は名前の通り紙器屋です。
とはいえ、一般的な箱などを作る紙器屋とは異なり、薄物と呼ばれる印刷物の打抜き加工をメインにやってきました。印刷された紙を、型を使って、折り筋入れやミシン入れ、切抜いたり、穴をあけたりといったことをします。

一見、機械と型があればだれでもできそうなイメージを持たれがちですが、実はミクロの世界での調整が必要な非常に繊細な技術が求められる作業です。当社は60年以上にわたり、その技術を継承し、研鑽してきました。

この連載では、当社社内教育用オリジナルテキストから内容を抜粋し、歴史、専門用語など打抜き加工に関する情報をご紹介していきます。これをお読みいただいた方が打抜きに少しでも興味をもっていただけると嬉しいです。

第1回目は基本編と題し、抜きの歴史と主要機械分類をご紹介いたします。

 

打抜き加工の歴史

日本で紙の機械式打抜き加工が発展したのは明治期以降です。産業革命の影響で消費が多様化する中、安価に大量生産ができる紙製箱の需要が高まり、それらの需要を満たすために印刷業界が大きくなりました。そして、その印刷物を加工するための打抜き加工業も発展することとなります。

戦前戦後にかけては出版業界が盛り上がりを見せ、販売競争の中で付録を付けた出版物が多く発行されました。お面のような簡単なものから、紙製プラモデルのような難しいものまで多種多様な紙製付録が誕生し、打抜き加工は箱以外の分野でも大きく花開きました。

その後印刷物が更に多様化していく中で、出版物だけでなく商業印刷物でも打抜き加工を必要とする媒体が増えてゆきました。

しかし、明治期から2,000年代まで順調に成長を続けていた印刷加工業界ですが、箱においては軟包材やペット素材、出版物や商業印刷物においてはインターネットの普及による需要低下に伴い年々縮小傾向にあります。90年代後半まで供給能力が需要にあわせて拡大し続けてきたため、需給バランスが整わず、慢性的な供給能力過多の状態にあります。そのため、打抜き加工は機械能力や加工単価がこの2,30年ほとんど変わっていません。

ただ紙自体の役割も時代に応じて変化してきており、情報媒体としてだけでなく、逆にITではできない、媒体そのものを加工できる自由度があるというメリットが見直されつつあるので、打抜き加工自体の需要はこれからも無くなることはないでしょう。

 

今も現役のビク抜き機

 

当社の誕生と最初に手掛けていたもの

当社は1957年に設立されましたが、設立当初は幼児誌というジャンルが誕生するタイミングで、当社はその付録加工を手掛けることから事業をスタートしました。当時の雑誌付録はかなり大掛かりなペーパークラフトが多く、当時の幼児誌付録「戦艦三笠組み立てキット」の実際のサンプルなどが社内に残っています。

 

 

打抜き機械の種類

打抜き加工に用いる機械は大きく4種に分類でき、加工する紙や仕様によって使い分けをします。

ここでは簡単に4種類の機構と用途、特徴をご紹介します。機械種類は地域によって呼び方が違ったり、業界内での通称もあるので、業界外の方にはわかりづらいものです。

 

プラテン式打抜き機

ビクトリア打抜き機(ビク)、トムソン打抜き機(倒し)、自動平盤打抜機(オートン)といった機械に代表される打抜き機のことです。加工できる用紙の幅が広く、安定した品質で大量生産ができます。面で加工するために大きな力が必要で、機械が大型です。プラテンは平圧をかけることを意味しますので、平圧式打抜き機は全てプラテン式の打抜き機となります。ただし、業界一般でプラテンといえばハイデルベルグ社のプラテン印刷機のことを指します。

 

 

シリンダー式打抜き機

シリンダー式の打抜き機は、円筒(シリンダー)形の圧胴を使って加工する機械です。ハイデルベルグ社のシリンダー打抜き機はこの機構を採用している最も有名な機械です。すでに機械の生産は終了していますが、40年以上前に作られた機械を現役で使用している会社も少なくありません。薄紙の抜きが得意です。また、高い見当精度で加工ができるのが特徴です。打抜きの業界で「ハイデル」といえば、シリンダー式打抜き機を指します。

 

 

ロータリー式打抜き機

シリンダー式打抜き機と同様に圧胴が円筒になっていますが、違いは型を組む胴も円筒になっていることです。腐食型を使用したシールの抜きや、薄い紙の加工に使われることが多いです。腐食型は薄い金属でできているので、簡単に円筒に巻きつけられます。大型の機械になると、木型を組んで段ボールの抜きにも使用します。打抜き部で紙を止めないで良いので、高速での大量生産を可能とします。

 

 

押し抜き機

ブッシュやアイセルといったパンチング機械のことで、ところてん方式で加工をします。加工の動きは遅いのですが、数百枚の紙を一度に抜くことができるので大量生産ができます。メモ帳や各種カード類、トランプ、厚みのある付箋の型抜きなどに使用されます。

 

 

当社はプラテン抜きを行っています

さて、4種類の打抜機械分類をご紹介しました。当社ではプラテン式打抜き機である自動平版打抜機を4台保持しており、A3からA倍判まで抜くことができます。打抜きでできることは非常に幅広く、雑誌付録に留まらず、レストランのメニュー表、コルクコースター、ハガキのミシン入れ、パズルの打抜き、ファイルのタトウ加工などなど機械に入るものならば凡そ何でもできます。

 

 

※このようにコルクなども抜くことが可能です。

今回は打抜きの歴史と機械分類についてご紹介いたしました。

次回は自動平版打抜機(オートン)について。お楽しみに!

 

「Ideaを形に。」東京紙器株式会社

 

2021.08.23

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