2024年7月3日、日本の財布の中身が大きく変わりました。一万円、五千円、千円の新しい紙幣が20年ぶりに発行され、私たちの生活に新たな顔ぶれが登場したのです。福沢諭吉、樋口一葉、野口英世という馴染み深い顔から、渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎へと変わる新紙幣。この変更は単なるデザインの刷新にとどまりません。
実は、紙幣の製造には驚くべき最新技術が詰め込まれているのです。今回は、日本の紙幣の歴史を紐解くとともに、私たちが日常的に使用している紙幣にいかに現代印刷技術の粋が詰まっているかを探っていきましょう。
Table of Contents
日本の紙幣、その始まりから現代まで
明治時代:近代貨幣制度の幕開け
日本の近代的な貨幣制度は、明治時代に始まります。1871年の「新貨条例」によって新たに「円」という通貨単位が定められました。翌1872年には「明治通宝」という紙幣が発行されました。しかし、当時の日本には高度な印刷技術がなく、原版はドイツで製作されました。
この時代、日本はあらゆる分野で西洋の技術を必死に吸収しようとしており、紙幣の製造技術もその一つでした。偽造を防ぐ手立てを講じることは通貨の信用を担保するうえで極めて重要なことです。国際的に後進国と捉えられていた当時の日本において、信用のある通貨を発行できるかどうかは国際的な承認を得るためにも死活問題でありました。
日本銀行の設立と「大黒札」の誕生
1882年、「日本銀行条例」の制定により日本銀行が設立され、日本の金融システムは大きな転換期を迎えます。1885年には初の日本銀行券「旧十円券」が発行されました。その後、旧一円券、旧五円券、旧百円券と発行が続き、それぞれ大黒天が描かれていたことから「大黒札」と呼ばれるようになります。
当時発行された紙幣の中で、旧一円券だけは現在でも使用できます。100年以上前の紙幣が今でも使えるなんて、驚きです。
戦後の混乱と聖徳太子の時代
第二次世界大戦後、日本の通貨制度は大きな混乱に見舞われます。GHQの指示や高インフレーションの影響で、新たにデザインした紙幣の発行が認められないなど多大な影響がありました。
しかし、そんな中でも戦前から変わらずに紙幣の顔として輝いていたのが「聖徳太子」です。1930年から発行が開始された「乙百円券」で初めて採用され、その後、千円券、五千円券、一万円券などの様々な高額紙幣の顔として登場し、戦後の高度経済成長を見守ってくれました。多くの日本人にとって、一万円札といえば聖徳太子、というイメージが長く続きました。
現代へ:変わりゆく顔ぶれ
1984年、日本の紙幣は大きな変更を迎えます。一万円札に福沢諭吉、五千円札に新渡戸稲造、千円札に夏目漱石が採用されたのです。その後も少しずつ顔ぶれは変わっていき、今回の2024年7月3日からは渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎という新たな顔ぶれになりました。
これらの人物は単なる著名人ではありません。彼らは日本の近代化に大きく貢献した人物たちであり、その精神は新しい紙幣にも受け継がれています。渋沢栄一は新産業の育成、津田梅子は女性活躍、北里柴三郎は科学の発展と、現代の課題にも通ずる分野で多大な貢献をしたため、日頃我々が目にするにふさわしいとの理由で採用されました。
また、偽造防止の観点から、精密な写真を入手できるか否かという点も選定理由として挙げられます。
紙幣製造の驚くべき技術
日本初の紙幣「大黒天」の頃から、紙幣には偽造防止策が施されています。現在でも使用されている「すかし」の技術は、当時より採用されていました。また、当時の写真技術では撮影が難しかった青色インキを使用することで偽造を防いでいました。
現在の紙幣にも様々な最新技術が使われています。これらの技術は紙幣の価値を守り、偽造を防止するために欠かせないものです。
歴史ある「すかし」
紙の厚みを変えることによって濃淡の差を生み出し、うっすらと絵柄を浮かび上がらせます。肖像以外にもバーパターンといって、コピー機などで読み取れない処理がされたものもあります。
触ってわかる深凹版印刷
インキを高く盛ることができる印刷方式です。目の不自由な方のための識別マークや、額面数字、日本銀行券の文字部分に使用されています。触るとザラつきを感じる、この技術。偽造防止にも一役買っています。
高度な設計と技術が必要なホログラム
高度な光学設計と加工技術を用いて対象物を立体的に再現する技術です。新札ではより高度な技術が採用され、見る角度によって画像や色が変化します。
パールインキ
パールインキは、紙幣を傾けるとピンク色の光沢が見える特殊なインキです。切手の印刷にも使用されています。
脅威の微細印刷!マイクロ文字
肉眼では判別できないほど微細な文字がマイクロ文字です。「NIPPONGINKO」という文字が印刷されていますが、通常のコピー機では再現不可能なほど小さいです。
クラブで光る?特殊発光インキ
偽造防止用インキとも呼ばれ、ブラックライト(紫外線)に当てないと見ることができない印刷です。一部の模様が発光します。
これらの技術の結果、日本の紙幣は世界で最も偽造が難しいとされています。100万枚あたりの偽札流通数は、アメリカの100枚、イギリスの207枚、ヨーロッパの63枚に対して、日本はわずか0.3枚と、その差は歴然としています。
紙幣の技術、どこで活きる?
これらの高度な技術は、紙幣だけでなく、私たちの身近なところでも使われています。
- 旅券
- 査証ページには、紙幣と同様の高度な印刷技術が使用されています。
- 証紙
- 公文書などに貼付される証紙にも、偽造防止技術が活用されています。
- 郵便切手
- 凹版印刷の技術や意匠性の高いパールインキやマイクロ文字が、美しい切手のデザインに使われています。
さらに、これらの技術は芸術の分野にも応用されています。凹版画という美術作品の制作にも、紙幣の印刷技術が活かされています。
販促に最適な「切手風目打ちシール」
さて、郵便切手といえば、高度な技術を少しでも手軽に体感してもらいたいという思いで、東京紙器では10年以上前から「切手風目打ちシール」を製造しています。紙幣ほどの高度な技術ではありませんが、独自のレーザー加工技術を用いて、文具や玩具用のオリジナルデザインの目打ちシールをお作りしています。
ブランドの魅力を高めたい企業様や、イベントの記念品の製作をお考えの方に、特別な付加価値を提供できる製品です。小ロットから製作可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
※数字が入っているなど、本物の切手と見間違うようなデザインは法律で禁じられているため製造できません!
まとめ 紙幣が語る日本の技術力
新紙幣の発行は、単なるデザイン変更以上の意味を持ちます。それは、日本の印刷技術力の結晶であり、歴史と伝統の継承でもあるのです。日々何気なく使っている紙幣。しかし、その一枚一枚に、日本の誇るべき技術と歴史が詰まっています。新しい紙幣を手に取ったとき、その重みを感じてみてはいかがでしょうか。
参考サイト
新しい日本銀行券特設サイト
https://www.npb.go.jp/ja/n_banknote/
国立印刷局
https://www.npb.go.jp/index.html
貨幣博物館 – 日本貨幣史
https://www.imes.boj.or.jp/cm/history/content/
日本銀行
兌換銀行券の発行
https://www.boj.or.jp/about/outline/history/hyakunen/data/hyaku1_2_3.pdf
関連記事
無地の切手風目打ちシール!自宅でオリジナルプリントできます
切手風目打ちシールの各種事例記事はこちらから!
富嶽三十六景
南極ポスト様事例
海嶌(みしま)天文台様事例
オオノ・マユミ様事例
怪奇商店様事例
上記以外にも事例多数ございます!
弊社HP右上の検索欄より“切手風目打ち”と検索してみてください!