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関興寺の「味噌なめたか」?

皆さんは座禅を組んだことはありますか?

座禅とは、姿勢を正して坐り精神統一を行うことで心を空にし、自己の心そのものが仏であることを自覚する、禅の基本的な修行法です。厳しい修行のイメージがある禅寺ですが、大変身近なものにも影響を及ぼしています。スティーブ・ジョブスが、禅に興味を持っていたのはよく知られています。ジョブスは禅の教えから、デザインを「シンプル」にするインスピレーションを受け、iPhoneをはじめとするApple製品にその哲学を反映させたと言われています。

座禅のイメージ

このように、実は私たちの日々の生活にまで影響を及ぼしている禅ですが、今回はそんな禅宗のお寺である関興寺様のご紹介です。関興寺の総門には「味噌なめたか」という不思議な言葉が記されています。このフレーズの背景には、寺院の長い歴史と共に紡がれたユニークなエピソードが隠されています。この記事では、その謎に迫るとともに、関興寺の歴史と、弊社が製作に携わった迫力ある龍と枯山水を模した素敵な切り絵御朱印をご紹介します。

最上山 関興寺とは

南魚沼市の風景

関興寺は「最上山 関興寺」といい、お米で有名な新潟県の南魚沼市に位置します。臨済宗円覚寺派のお寺で、開創は室町時代の1410年とされています。1410年といえば詩画軸の傑作「芭蕉夜雨図」が描かれた年とされ、遡ること10数年前には、京都で金閣寺が建造されており、禅宗全盛の時代に開創された歴史あるお寺であることが分かります。

芭蕉夜雨図_室町時代・応永17年(1410)
芭蕉夜雨図
出典:国立博物館所蔵品統合検索システム(https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-12094?locale=ja)

そんな関興寺ですが、上杉謙信で有名な上杉家からの加護を受けていました。しかし、激動の上杉家と同じく、特に戦国期においては苦難の日々を送ることになります。もとは七堂伽藍を有す広大な寺院でしたが、北条家との戦いや御館の乱など、度重なる戦乱によって衰退の一途を辿り、追い打ちをかけるように上杉家の米沢への転封という不運も重なりました。江戸時代に入り現在の南魚沼市上野の地に再建されてからは時運が一転し、幕府から十萬石各別格本山の格式を与えられるまでになりました。

しかし、その苦難の時代に見舞われた災難が「味噌なめたか」の誕生と関係しているのです。

関興寺の味噌なめたか?

味噌壺

上杉謙信没後の後継者をめぐって発生した御館の乱は、周辺諸国を巻き込んだ大規模なもので、関興寺もその影響から逃れることができませんでした。戦乱の中で大規模な焼き討ちにあい寺院は全焼してしまうのですが、時の住職、雨天是鑑和尚の機転で600巻にも及ぶ大般若経典を味噌桶に入れて埋めたことで焼失を免れました。

そのことで、関興寺の味噌は経典を守った有り難い味噌として知られるようになり、その御利益にあずかるために参拝の折に味噌をいただくようになったのでした。そうして、「関興寺へ参拝したのに、味噌をいただかないのはもったいない。」ということから、人々の間に「関興寺の味噌なめたか」という問いかけが生まれたのです。

600巻もの経典を入れるには、相当な量の味噌樽が必要ですが、そもそもなぜ味噌がそんなにあったのでしょうか。

実は、室町時代から大豆の生産量が増えるにしたがって、味噌が一般庶民の間でも普及するようになります。植物性の高タンパク食材とあって、菜食が求められた仏教寺院の間で日常食として味噌づくりが盛んに行われ、また収入源の1つとして販売活動も行われていたそうです。仏僧が厳しい修行に耐えるための栄養素として、味噌は欠かせない存在だったのですね。

龍と枯山水をモチーフにした切り絵御朱印

関興寺の切り絵御朱印_全体図

関興寺には、江戸時代に建てられた非常に立派な本堂と枯山水の庭園があります。本堂前にはる枯山水の庭園を「臥龍の庭」といい、中央にある大きな岩が寝ている龍を表し、石の周りにある砂紋は水の流れを表現しています。今回製作した切り絵御朱印は、この枯山水の世界観が再現されています。特に御朱印の右下に配置された「流れ」の造形にこだわっていて、注目していただきたいポイントです。

関興寺の切り絵御朱印_枯山水の部分

本堂に至る参道には三門があります。三門とは三解脱門(さんげだつもん)の略で、仏教寺院に多く見られる楼門のことです。この三門の天井に大迫力の雲龍図が画かれており、今回の御朱印で特に存在感を放つ龍のモチーフとなっています。

関興寺の切り絵御朱印_龍の部分

この御朱印には、頒布時に「味噌なめたか」の文字と味噌樽を模したかわいい印鑑が押されます。是非実際に参拝して手に入れてみてください!

見どころいっぱいの寺院

関興寺は非常に見どころの多い寺院で、例えば総門は300年前ほど前に建造された門で、徳川家の譜代大名であった酒井家の家臣、下田家の屋敷門を移築したものです。欄間のある廊下は漆が塗り重ねられ鏡のようなことから「鏡廊下」とも呼ばれていて、美しく光り輝いているそうです。他にも、廊下にはさまざまな形の埋木細工が施されている場所が20箇所以上あるそうで、これを探しながら見学するのも面白いですね。

調べれば調べるほど行きたくなる古刹「関興寺」。南魚沼方面を訪れる際は是非参拝してみてください。写経や座禅体験もできるそうなので、日頃のストレスから離れて心を落ち着かせたり、スティーブ・ジョブスに思いを馳せたりしても良いでしょう。

もちろん、最後には御朱印をいただくのをお忘れなく!

最上山 関興寺 公式サイト

https://kankouji.coolblog.jp/index.html

南魚沼市観光協会

https://m-uonuma.jp/

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